(ニフティニュース)
中国メディアの環球時報は2日付で、アルゼンチンが中国とパキスタンが共同開発した戦闘機「JF-17」を購入する可能性が高いとして、先ごろの珠海航空ショーで中国が出展した装備品と合わせて「英国人が夜も眠れぬようになった」と論じる記事を発表した。
JF-17は中国とパキスタンが共同開発した単座式全天候型多用途戦闘機で、初飛行は2003年9月だった。同機の開発構想は1980年代に端を発している。当初は中国の改革開放を好感した米国など西側諸国が協力したが、1989年に発生した天安門事件が原因で西側諸国は手を引いた。中国はその後、新型戦闘機の開発をパキスタンと共同で進めることになった。パキスタンの主な「役割り」は、同国が運用していた米国製のF-16戦闘機についての情報提供だったとの見方が強い。
開発された戦闘機の中国側呼称はFC-1で愛称は梟龍、パキスタン側呼称はJF-17で、愛称は「サンダー」となった。中国ではパキスタン側の愛称を中国語に置き換えた「雷電」と呼ばれることも多い。
環球時報記事は、米国メディアが最近になり、アルゼンチン政府が改良型のJF-17の12機購入を決定したと報じたと紹介。ただし、アルゼンチン政府側は最終決定したことを否定したことも、併せて伝えた。
環球時報がアルゼンチンの戦闘機購入の話題を英国と絡めて論じた背景には、フォークランド諸島の領有権をめぐる両国の対立があると考えてよい。フォークランド諸島はアルゼンチン本土の沖合にあり、19世紀前半から英国が支配している。しかしアルゼンチンは同諸島に対する領有権を主張し、1982年には両国間に3カ月に及んだ本格的な武力衝突である「フォークランド紛争」が発生した。
中国は同問題についてアルゼンチンを支持しており、同諸島の地名についても、アルゼンチン側の呼称であるマルビナス諸島を中国語に音訳した「馬爾維納斯」を使い続けている。2021年6月24日にも、中国の耿爽国連大使が国連脱植民地化特別委員会で、フォークランド諸島の問題について発言し、同問題は「植民地主義が歴史に残した問題」であり、中国はアルゼンチンの主張を一貫して支持していると主張した。
環球時報記事は、アルゼンチンがフランスやロシアの戦闘機を購入する可能性は極めて低く、JF-17以外には、米国に中古品となったF-16やF/A-18を海外に売却する動きがあるが、米英の同盟関係を考えれば、米国がアルゼンチンに自国製戦闘機を売却することには疑問が残ると主張するアルゼンチンの専門家の意見を紹介。さらに、英国の専門家による「JF-17は(アルゼンチンにとって)ますます最善の選択になってきたようだ」との見方も紹介した。
記事は、「英国人が夜も眠れぬようになった」論拠として、9月28日から10月3日まで開催された中国国際航空航天博覧会(中国航空宇宙飛行博覧会、通称は珠海航空ショー)で中国が出展した改良型JF-17の新型レーダーやエンジン、装備可能なミサイルを挙げた。
改良型JF-17はアクティブ・フェーズドアレイ式レーダーと中国が開発したターボファンエンジンであるWS-13(渦扇13)を搭載しており、中国が開発した短距離空対空ミサイルのPL-10(霹靂10)やアクティブレーダーホーミング中距離空対空ミサイルのPL-12(霹靂12)、さらに対艦ミサイルYJ-83(鷹撃83)を搭載できるという。
珠海航空ショーではPL-15E、SD-10A、PL-10E、CM-802Bなどの、中国が開発したさらに新型の空対空・対艦ミサイルも出展された。特にCM-802Bは、射程が290キロと従来型よりも大幅に向上し、障害物を回り込んで攻撃できることから、標的とする艦船を「死角なし」でピンポイント攻撃できるがあるという。
同記事はJF-17について、「軽戦闘機ではあるが、搭載された新型の空対空ミサイルや空対地ミサイルは大変な脅威だ」と主張する英国人専門家もいると紹介した。(翻訳・編集/如月隼人)
投稿者 荒尾保一