[時事 11日] – 南米アルゼンチンの大統領選は19日の決選投票まで1週間となった。年100%を超えるインフレなど経済危機への対応が主要な争点だ。10月に行われた第1回投票でトップに立った与党連合(中道左派)のセルヒオ・マサ経済相(51)を中央銀行廃止など過激な公約を掲げる独立系右派のハビエル・ミレイ下院議員(53)が猛追し、競り合いの様相を呈している。
コンサルティング会社アナロヒアスの世論調査によると、支持率はマサ氏が42.4%で依然優位に立っている。ミレイ氏は39.7%だが、差は10月の投票時よりも縮小した。ミレイ氏を優勢とする別の世論調査もあり、最後まで予断を許さない状況だ。
両陣営は、第1回投票で約24%の得票率で3位と敗れたパトリシア・ブルリッチ元治安相の支持票を奪い合っている。ミレイ氏は、ブルリッチ氏やマクリ前大統領ら野党連合(中道右派)の一部と「左派政権打倒」で方針が一致。決選投票での支援を取り付けた。ただ、野党連合を構成する政党の中には一線を画す動きもあり、支持票をどこまで取り込めるのか不透明感が強い。
これに対し、マサ氏は7日、次期政権の経済相について自身の政治勢力からではなく、「別の勢力から起用する」と表明。野党連合からの離反者を誘う戦術にかじを切った。
アルゼンチンは、主産品の農産物が干ばつの影響で不作となり、輸出が不振。通貨ペソが急落し、インフレが一段と進んだ。
ミレイ氏は経済の安定に向けて中銀廃止の他、ペソに代わりドルを導入する「ドル化」などを公約。利益誘導型ではない新たな政治を求める人々からの支持を伸ばし、8月の予備選で事前予想を覆してトップとなった。マサ氏は、ミレイ氏の公約は実現が難しいと批判し、経済対策として減税を打ち出した。
投稿者 宍戸和郎