[時事 24日] – 南米アルゼンチンでミレイ大統領が就任して24日で2週間となる。経済危機が深刻化する中、大統領選で訴えた法定通貨のドル化など過激な主張は封印。年100%を超えるインフレを退治するため、財政健全化といった「正攻法」の対策を打ち出した。中国を挑発する発言も控え、したたかな戦略を見せている。
「経済成長を妨げてきた多くの規制を撤廃する」。ミレイ氏は20日夜、テレビ演説で、300項目以上の法令の見直しを通じて、経済の活性化を図る考えを示した。小さな政府を目指すミレイ政権は発足から2日後にも、通貨ペソの価値を約半分にする措置や、エネルギーと輸送の補助金削減など財政赤字の是正策を公表した。
選挙戦では、放漫財政に対処する姿を訴えようとチェーンソーを振り回すパフォーマンスを演じた。ドル化や中央銀行の廃止といった公約も掲げた。しかし、ミレイ氏は経済学者の顔を持つ。「持っているお金よりも多くを支出する政治」が危機を招いたと至極まっとうに分析。就任後は、20世紀初頭に経済が豊かだった歴史にも触れ、国民に「痛みを伴う改革」を受け入れるよう訴えている。
外交では親米路線を推進しながらも、中国批判は影を潜めた。ミレイ氏は、就任式出席のために訪問したグランホルム米エネルギー長官らと協議。電気自動車(EV)の電池に不可欠で国内に豊富な重要鉱物のリチウムの開発などに関して米側の協力を取り付け、将来の成長に布石を打った。
一方、「中国とは取引しない」と反中姿勢を鮮明にしていたミレイ氏は、態度を翻して就任式翌日に習近平国家主席の特使と会談。中国側によると、「一つの中国」原則を支持し、協力を推進する考えを示した。経済再建に向けて中国を利用しようという思惑があるとみられるが、中国英字紙チャイナ・デーリー(電子版)は社説で「2国間の利益と一致している」と論評した。
投稿者 宍戸和郎