[世界日報 23日] – アルゼンチン下院は20日、親米保守のミレイ政権が最優先課題として掲げてきた労働改革法案を賛成多数で可決した。1940年代のペロン政権以来、世界で最も手厚いとされる労働者保護を維持してきた同国にとって、雇用慣行を根本から覆す転換点となる。
ミレイ大統領は、現行の労働法が企業の採用意欲を削(そ)ぎ、経済停滞の元凶になっていると主張してきた。アルゼンチンでは正規雇用のコストが極めて高く、解雇の際も多額の補償金を支払うことが義務付けられている。このため、「未登録」の違法な非正規雇用が国内の全労働者の約4割に達しており、労働市場の歪(ゆが)みが深刻化している。
法案の柱は、解雇の際に支払う補償金制度の抜本的な見直しだ。企業が負担する現行制度から、毎月の給与から積み立てる基金制度への移行を認める。また、試用雇用期間を従来の3カ月から大幅に延長し、期間内であれば解雇補償なしでの契約終了を可能にする。雇用の流動性を高めることで外資を呼び込みやすい環境を整えることが目的だ。
一方、国内最大の労組、労働組合連合(CGT)は「(新法案は)労働者の権利を剥奪し、奴隷化するものだ」と猛反発している。20日には、首都ブエノスアイレスを中心に全国規模のストライキが決行され、公共交通機関が停止したほか、議事堂周辺ではデモ隊と治安部隊が激しく衝突し、多数の負傷者が出た。
法案は今後、上院での最終承認を経て大統領の署名により成立する見通しだが、労組側は憲法違反を訴えて司法闘争を辞さない構えを見せている。長年続いた「(労働法の)聖域」にメスを入れるミレイ政権のショック療法に対し、国内は大きく揺れている。
投稿者 宍戸和郎
