雑誌フィガロジャパン(FIGARO.jp)11月号に、アルゼンチンのタンゴの危機的状況が掲載されている。同記事次の通り

 

アルゼンチンといえば、すぐにタンゴを思い浮かべる人が多いだろう。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、そのタンゴ文化、具体的に言うとブエノスアイレスに200軒以上あるタンゴのダンスサロン、ミロンガが閉鎖の危機に直面している。

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ミロンガの空席の現状

アルゼンチンは、パンデミックを受けて、今年の3月20日から厳しい自宅隔離令が発令されている。9月に入ってからは、それでも少しずつ活動制限が解除され始め、これまでテイクアウトのみだった飲食店が、屋外席であれば飲食が可能に。衣料品や雑貨などの店舗は、入場制限などの感染防止プロトコルに沿って営業を再開したが、ショッピングセンターなどの大型店舗は閉店のままだ(2020年9月下旬現在)。もちろん、すでに多数の店舗が持ち堪えられずに閉店している。

このような状況の中で、ミロンガも同様に半年以上閉鎖され、借金を抱えるオーガナイザーやスタジオオーナーも少なくない。ミロンガが閉鎖されるということは、タンゴダンサーや経営者の危機だけでなく、そこで働くDJ、ミュージシャン、料理人、ウエイトレスやウエイター、さらにはタンゴ学校、振付師など、あらゆる関係者も失業するということだ。しかも激しいインフレーションによるアルゼンチン通過ペソの暴落により、物価は毎日のように値上がりしているため、厳しい状況に追い討ちをかけている。

 

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上の画像と同じミロンガ。閉鎖前は毎晩盛況を見せていた。

そこで、ブエノスアイレス・フローレス地区にある伝統的なペドロ・エチャウエ・クラブにて、ミロンガ「Gente Amiga(ヘンテ・アミガ)」を主催するタンゴのダンスカップルであり、タンゴ講師も務めるホセ・ルイスと福田リカが、タンゴを愛する在亜日本人女性達と共に、ミロンガを支援するためのクラウドファンディングを立ち上げた。集まった支援金はミロンガ主催者協会AOM(Asociación de Organizadores de Milongas)へ寄付し、AOMの運営資金や各ミロンガの再開資金などに当てられることになる。AOMの大切な活動内容のひとつは、それぞれのミロンガが国の補助金を受け取れるような制度を構築するための手続きを行うこと。その補助金がミロンガ再開の大きな手助けとなるのだ。

タンゴは、2009年にユネスコの世界無形文化遺産に登録。ミロンガはそのタンゴ音楽家やダンサーの活躍の場であり、ダンス愛好家の社交場、生きたタンゴ文化継承の場だ。少しでも多くのミロンガを救い、コロナ後に日本はもちろん世界中から訪れる人たちを、再び、素晴らしいタンゴ音楽と温かい抱擁で受け入れることができるようサポートすることを目的としたこのクラウドファンディング、美しい文化の灯を消さないためにも、ぜひ支援の手を差し伸べてほしい。

ミロンガは、日本で言うところのまさに「3密」。密閉空間のダンスフロア、多数が集まる密集場所、近づいて踊る密接場面。だからこそ、このパンデミックはミロンガ存続の危機なのだ。

クラウドファンディング・プラットフォーム MOTION GALLERY
「BuenosAires MILONGAS AID  タンゴのダンスサロンを閉鎖の危機から守ろう!」
https://motion-gallery.net/projects/supportbamilongas/

投稿者 荒尾保一