[BBC News Japan 20日] – 南米アルゼンチンで19日、大統領選の決選投票が行われ、極右の独立候補ハビエル・ミレイ氏(53)の勝利が確実となった。与党・ペロン党の対立候補、セルヒオ・マサ経済相は、ミレイ氏に電話で敗北を伝えた。
アメリカのドナルド・トランプ前大統領は、ミレイ氏の勝利を歓迎。自身のスローガンである「アメリカを再び偉大にする」にかけ、ミレイ氏は「アルゼンチンを再び偉大にする」と述べた。
今回の大統領選は、インフレによる物価高騰や経済危機の不安が高まる中で実施された。
リバタリアン(自由至上主義者)のミレイ氏は、中央銀行の廃止などを公約に掲げ、変化を強く求める有権者から支持を得た。
開票率90%の時点で、ミレイ氏の得票率は56%、マサ氏は44%だった。
首都ブエノスアイレスでの勝利演説でミレイ氏は、「きょうからアルゼンチンの再建が始まる。きょうでアルゼンチンの没落は終わる」と述べた。
ミレイ氏はトランプ氏や、ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領などになぞらえられ、その実力は未知数だ。
だが、それがミレイ氏のアピールポイントでもあった。
アルゼンチンの公式通貨に米ドルを導入するというミレイ氏の発言は、支持者たちの喝采を浴びた。ただし、多くのエコノミストは財政破綻を懸念している。
それでもミレイ氏が勝利したことは、年間インフレ率が140%を超え、5人に2人が貧困にあえぐなかで、アルゼンチン国民が伝統的な政治と経済危機にうんざりしていることを示している。
トランプ氏が祝福
ミレイ氏の勝利を受け、トランプ前大統領は自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に「全世界が見ている!あなたを誇りに思う」と投稿した。
「あなたは国を大きく変化させ、本当にアルゼンチンを再び偉大にするだろう」
ジェイク・サリヴァン米大統領補佐官(国家安全保障担当)もミレイ氏の当選と、「アルゼンチンの人々が自由で公正な選挙を行ったこと」を祝福した。
ソーシャルメディアへの投稿でサリヴァン氏は、アメリカは「人権、民主的価値、透明性への共通のコミットメントに基づく強固な二国間関係の構築を楽しみにしている」と述べた。
南米諸国の反応
南米諸国の指導者らも、ミレイ氏の勝利にコメントしている。
ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ大統領は、「新政権に幸運と成功を祈る。アルゼンチンは偉大な国であり、すべての尊敬に値する」と投稿した。
「ブラジルは、アルゼンチンの兄弟たちと協力するために、いつでもここにいる」
ミレイ氏は選挙活動中、ルラ氏の政策を公に批判し、同氏を「怒った共産主義者」だと語っていた。
コロンビアのグスタヴォ・ペトロ大統領は、ミレイ氏の勝利は「ラテン・アメリカにとって悲しいことだ」と発言。「新自由主義は社会のためにならないし、人類が現在抱える問題に応えられない」と批判した。
チリのガブリエル・ボリック大統領は、ミレイ氏の勝利と、マサ氏が敗北を認めたことをたたえるとした。
投稿者 宍戸和郎