[ブルームバーグ 22日] – 世界貿易戦争が農業市場の混乱を招く中、ブラジルとアルゼンチンがいち早く「勝ち組」として浮上しつつある。農産物の最大供給国である米国と最大消費国である中国の対立が激化しており、南米2国にとっては、食肉から穀物に至るまであらゆる農産物の輸出を拡大し世界市場のシェアを奪う好機が生まれている。
新たなチャンスは食肉だ。トランプ米大統領が米国産牛肉の輸出先上位10カ国のうち8カ国に対して関税を賦課したことで、貿易の流れは既に変化している。ブラジル産牛肉のアルジェリアやトルコなどハラル市場への輸出が急増。米国産牛肉輸入で世界2位の日本もブラジルからより安価な肉を輸入するための協議を進めている。データグロの市場アナリスト、ギルヘルメ・ジャンク氏は、貿易戦争が経済減速を引き起こせば、他の牛肉輸入国もブラジルを中心とするより低コストの供給国に調達先を切り替えるだろうとの見方を示した。
これまでのところ、ブラジルとアルゼンチンにとって主な輸出の追い風は、米国産品からのシフトを進める中国だ。中国は4月にブラジルから大量の大豆を購入し、アルゼンチン産鶏肉の輸出再開に最近合意している。インスペル大学のマルコス・ジャンク上級教授(グローバルアグリビジネス学)によれば、南米諸国の関税同盟メルコスル(南部共同市場)と欧州連合(EU)の貿易合意に向けた交渉が加速していることから、欧州への輸出拡大の可能性もあるという。
元商品トレーダーで現在はブエノスアイレスのトルクァト・ディ・テラ大学で教授を務めるイヴォ・サルジャノビッチ氏は、米国が大豆やトウモロコシの収穫期を迎える10-12月(第4四半期)まで混乱が続けば、米国は輸出できなくなり、中国や欧州は南米からの調達を継続するだろうと指摘した。
投稿者 宍戸和郎