[ブルームバーグ 17日] – アルゼンチン大統領選挙の予備選で勝利したハビエル・ミレイ氏は、10月に予定される本選で勝利した場合は国債のデフォルト(債務不履行)回避に全力を尽くすと表明する一方、中央銀行は廃止すると語った。
リバタリアン(自由至上主義者)を自称するミレイ氏は13日の予備選で事前予想に反して得票率首位となり、市場の動揺を招いた。同氏はブルームバーグ・ニュースに対し、自身の大胆な財政調整策によりアルゼンチンの評判と信用度を高め、デフォルトを不要にすると語った。
ミレイ氏の計画には、公共事業の大幅縮小や省庁数削減、補助金廃止、企業が米ドルで取引できるようにする資本規制などにより、2025年半ばまでに国内総生産(GDP)の13%以上の歳出を減らすことが含まれている。さらに、中銀は「存在意義がない」として閉鎖し、6400億ドル(約94兆円)規模の同国経済をドル化する計画だ。
ブエノスアイレスで16日に2時間にわたるインタビューに応じたミレイ氏は「デフォルト回避に向け私は全力を尽くすつもりだ。必要な財政調整を行えば、資金繰りは可能だ」と述べた。
これまで本命視する投資家がほとんどいなかったアウトサイダーのミレイ氏が予備選で首位となったのを受け、アルゼンチンの資産価格は急落。政府は14日の市場取引開始時に、厳しく管理された公式為替レートの18%切り下げを余儀なくされた。
16日のアルゼンチン国債はインタビュー後、まちまちの動き。2030年償還債は0.2セント安の額面1ドル当たり31.4セントで、4日続落したが、2046年償還債は上昇。ペソは非公式の並行市場で一時4%下落し、1ドル=710ペソ前後と過去最安値を更新した。
ミレイ氏が予想外の勝利後に外国メディアとのインタビューに応じたのは今回が初めて。同氏は113%に達しているインフレ率を下げる方法として、ペソを廃止して米ドルに替える計画を詳述し、「地球上に存在するゴミで最悪のもの」と呼ぶ同国中銀への批判を強めた。
大統領選で勝利した場合、同氏は中銀の鍵をドル化計画の非公式アドバイザーであるエコノミストのエミリオ・オカンポ氏に渡し、中銀を閉鎖できるようにする方針。オカンポ氏はまた、アルゼンチン向けに440億ドルの融資プログラムを組んでいる国際通貨基金(IMF)との交渉も支援する。ミレイ氏はIMFにさらなる資金を求める計画はないとも述べた。
投稿者 宍戸和郎