節分の豆はどこから来るか

2018/02/03
今日は節分で豆まきをする家庭も多いだろう。豆まきの由来はさておき、まく豆は炒って発芽しないようにした大豆(glycine max)を使う。

大豆消費の半分以上は家畜飼料
 大豆は、タンパク質や油脂、イソフラボン(isoflavone)、サポニン(saponin)などを含む。また、大豆は米国やブラジル、アルゼンチン、カナダなど世界中で約3.2億トンも生産され、家畜用飼料としても重要な作物だ。日本は生産量が約23万トン、消費量が約310万トンでほとんどを米国やブラジルからの輸入に頼っている。

 世界で最も大豆の消費量の多いのが中国(約9500万トン、生産量は約1200万トン)で、次いで米国、アルゼンチン、ブラジルと続く。日本では大豆を味噌や醤油、納豆、豆腐などに使うが、世界の多くの地域で家畜飼料としての利用が半分以上を占める。

 このようにトウモロコシとともに世界の食糧生産に欠かせなくなっている大豆だが、中国東部や日本、朝鮮半島、沿海州などの東アジアに原生するツルマメ(glycine soja)から品種改良されたものと考えられている。

 ヨーロッパへは17世紀に長崎の出島にいたドイツ人エンゲルベルト・ケンペル(Engelbert Kaempfer)が伝えたとされ、米国へ渡った大豆は幕末にペリー提督(Matthew Perry)が持ち帰ったものが起源になっている。その後、ヨーロッパや新大陸で拡がった大豆は、ボトルネック効果(bottleneck effect)により遺伝的な多様性が失われ、東アジアの野生種の遺伝子に注目が集まるようになった。

 日本では北海道から鹿児島までの約400種のツルマメの野生種が採取され、リスト化されているが、中国や韓国でも同じようなリスト化が行われている。また、海水が浸入する中国の黄河デルタ地域の野生種を分析することで、塩害に弱く生産地域が限定されている現在の大豆の品種改良に役立てようという研究もある。

多様性と遺伝子組み換え
 すでに野生のツルマメの全ゲノム配列はわかっているが、東アジアにはまだ遺伝的に多様な原種が残っていて、その遺伝子資源は貴重なものとされている。農林水産省によれば、国内で普及している大豆の品種は、その全てが国内育成種か在来種で、大豆の品種改良に遺伝子組み換え技術を使っていないようだ。

 一方、大豆の輸出国である米国やブラジルなどでは、そのほとんどが遺伝子組み換え大豆(米国では約94%)であり、世界でみても遺伝子組み換え大豆の栽培面積は全農作物の約半数を占める。またブラジルでは、大規模大豆農園の周辺環境への悪影響が懸念されているようだ。ちなみにブラジルにおける大豆生産は、1970年代に日本の支援などで大規模化した。

 豆まきの豆は「炒る」が、その理由は拾い損ねた豆が発芽することを防いだり、炒るときの音が邪気を払ったり、炒るが「鬼の目を射る」につながったりなどの諸説がある。拾い損ねた豆が発芽すると縁起が悪いとされていたようだ。また、ペットの拾い食いにも注意したい。

 豆や種を炒ったり焙煎したりすることは、コーヒー豆やビールの麦芽などでよく行われる。きな粉の原料は焙煎して砕いた大豆だ。また、モヤシは大豆や緑豆(Vigna radiata、緑豆モヤシ)などから作られる。いずれにせよ、炒らない大豆は条件が合えばすぐに発芽してしまう。

 ただ、大豆や炒り豆はあまり消化が良くない。年の数や年の数+1個などと言われるが食べ過ぎに注意だ。

石田雅彦
フリーランスライター、編集者
北海道生まれ、医科学修士(MMSc)、横浜市立大学・共同研究員(循環制御医学教室)

投稿者 荒尾保一