(ブルームバーグ)
アルゼンチン債相場は28日、約8週間ぶりの大幅な下げとなった。大統領選で勝利したアルベルト・フェルナンデス元首相とクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル前大統領の下で進められる経済政策を巡り不透明感が払拭(ふっしょく)されることを投資家は求めている。
2046年償還のドル建て債は額面1ドル当たり40.4セントと、前週末の42.4セントから下落し、9月3日以降で最も大きな下げを記録。新興国市場債の値下がりを主導した。JPモルガンの指数によると、上乗せ利回りは76ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大して22.47bp。
ペソの非公式レートは1ドル=約82ペソと、前週末の80ペソから下落。個人のドル購入額を月200ドルに制限する通貨統制が大統領選後に導入されたことが響いた。
【10月28日 時事通信社】南米アルゼンチンで27日に行われた大統領選で、左派のフェルナンデス元首相が再選を狙った中道右派の現職マクリ氏を退けて初当選した。左派の政権復帰は4年ぶり。何度も債務不履行(デフォルト)を繰り返してきた同国の財政は、昨年の干ばつや通貨安などで再び危機的状況にあり、次期大統領のかじ取りを世界が注視している。
「われわれには困難が待ち受けている。大事なことは国民をこれ以上苦しめないことであり、そのためならどんなことでも(マクリ氏と)協力する」。27日夜の勝利演説で、フェルナンデス氏はことさら円滑な政権移行を強調してみせた。8月の予備選で、大方の世論調査を裏切って大勝。直後に為替、株価、債券が急落したことを意識し、市場をなだめるための言動だった。
フェルナンデス氏は選挙戦で実質賃金や年金引き上げなどを公約し、マクリ政権の緊縮財政で疲弊しきった国民に「大きな政府」復活を暗示。さらに、厳しい財政規律を課されることから、同国では「苦しみの元凶」と不評の国際通貨基金(IMF)金融支援の見直しを訴えてきた。ただ、国庫は3000億ドル(約32兆6000億円)以上の対外債務を抱え逼迫(ひっぱく)しており、ばらまきの余裕はない。選挙戦では現状への「有効な処方箋は示してこなかった」(経済アナリスト)だけに、明確な再建のロードマップ(行程表)を示すことが求められている。
投稿者 荒尾保一