[ブエノスアイレス 23日 ロイター] – アルゼンチンが400億ドル以上の債務再編に向け国際通貨基金(IMF)と複雑な交渉を進める中、同国からの外貨流出が加速しており、脆弱な経済に対する新たな疑念を引き起こしてい
先月の中間選挙で大敗した政権は、自国通貨ペソを支えるためにドルを使って高インフレに対処。資本規制を懸念する預金者も銀行システムの外に資金を移そうとしている。
中央銀行の準備総額は、8月のピーク時から50億ドル以上減少し、約410億ドルとなり、22日のIMFへの19億ドルの支払いで390億ドルになった。流動性のある準備はゼロに近いと語るアナリストもいる。
公式および市場のデータによると、過去2カ月間に民間銀行のドル建て預金は約10億ドル減少。この傾向は最近の選挙後の政治的不透明感の中で、チリやペルーといった近隣の新興国でも見られた。
コンサルタント会社ロハスのアナリスト、アルマンド・ロハス氏は「準備と預金の流出は今後も続くだろう。ペソがほとんど誰にも興味を持たれていないという理由だけでなく、政治的シグナルが安全性を生み出していないからだ」と語った。
アルゼンチンからのドル流出は何年も前から続いているが、ペソに対する信頼性が低く賃金や貯蓄が減る中、今ではペースが上がっている。アルゼンチンペソは対ドルで暴落し、現在は年率50%以上のインフレに直面している。
アルゼンチンの人々は銀行システムからしばしば外貨を引き出そうとし、中銀はペソを支えるために定期的に外国為替市場に介入せざるを得ないが、現在は厳しい資本規制によって抑制されている。
2019年の市場クラッシュと資本逃避を受けて導入された資本規制により、多くのアルゼンチン人は非公式な外為市場に流れ、そこではドルが公式市場の約2倍の高値で取引されている。
コンサルティング会社AdCapのエグゼクティブディレクター、ハビエル・ティメルマン氏は、多くのアルゼンチン人が先月の中間選挙で敗北したフェルナンデス大統領による中道左派の正義党(ペロン党)政権に対する信頼を失っていると指摘。「非常に健全な金融システムがあるにもかかわらず、ドル建ての預金が流出しているため、貸金庫が最大で50%増加している」と述べ、「政府は明確なシグナルを出す必要がある」とした。
民間のアナリストは公式データに基づいて、公式の金融システムの外もしくは海外預金にアルゼンチンの貯蓄が約2500億ドルあると推定。これは国内市場に対する信頼の欠如を反映している。
また、アルゼンチンは破綻した2018年の融資合意に代わる新しいIMFプログラム協議の最終段階に入っている。政権は、2022年に支払うべき約190億ドルのうち、約40億ドルの返済期限が来る3月までに合意をまとめたい考えだ。
関係筋によると、アルゼンチン中銀は新型コロナウイルス禍から経済が回復する中、インフレを抑えるために利上げを現在検討しているという。
ポートフォリオ・パーソナル・インバージョンズのアナリスト、エミリアノ・アンセルミ氏は「利上げは必要だ。(金利は)現在、(インフレ率に比べて)大きなマイナスであり、これがドルを強めている」と語った。
投稿者荒尾保一