[ブルームバーグ 24日] – アルゼンチンのミレイ次期大統領は、同国最大の貿易相手国に対する攻撃的な発言を急速にトーンダウンさせており、結局のところ次期政権は国際情勢をさほど混乱させることはないとの見通しが強まっている。

8月に行われたブルームバーグ・ニュースとのインタビューでは、中国政府を「暗殺者」と呼び、当選しても「共産主義者」が率いる国やブラジルとの関係を維持しないと語っていた。だが19日の大統領選決選投票で地滑り的勝利を収めて数日後のコメントは、驚くほど友好的に聞こえた。

中国から送られた書簡を巡り習近平国家主席に謝意を示しつつ、中国国民に対してはよろしくとのメッセージを22日にソーシャルメディア経由で送った。書簡は習氏がミレイ氏の勝利を祝福するとともに、中国とアルゼンチンの関係は双方にとって「目に見える利益」を伴い、常に「相互尊重」に基づいていることを再認識させる内容だった。

また、12月10日の就任式にブラジルのルラ大統領が出席することを「歓迎する」と22日に地元テレビに語った。かつて批判した、アルゼンチン出身のローマ教皇フランシスコとの不和も解消した。21日に教皇から電話を受けたミレイ氏は、近くアルゼンチンを訪問するよう教皇に勧めた。

リバタリアン(自由至上主義者)で過激な発言で知られるミレイ氏は、アルゼンチンの課題解決を巡り急進的な公約を掲げて選挙に勝利した。だが、大統領就任に備える中でのこうした姿勢転換は、少なくとも外交政策ではより現実的なアプローチを採用することを示唆するものだ。

ウィルソン・センターの中南米プログラム幹部のベンジャミン・ゲダン氏は「これは不可避だった。アルゼンチンは最も重要な貿易相手国を遠ざけることはできない」とした上で、「外交政策に関し、ミレイ氏がマクリ前大統領を含め、より現実的なアドバイザーの助言に従っていることは明らかなようだ」と指摘した。

投稿者 宍戸和郎