アルゼンチン政府とIMFとの債務再編交渉について、ファイナンシャル タイムズ紙は、アルゼンチンの債務450億ドル(約5兆円)の再編交渉期限が迫るなか、アルゼンチンが態度を硬化させ、協議をまとめるためにIMFは金利を引き下げ、同国政府の経済計画を支援すべきだと主張していると

報じている。

グスマン経済相

交渉は1年前から続いているが、2022年に返済されなければならない190億ドルのうち28億ドルの期限が同年3月に迫っている。これに対し、アルゼンチン政府は、22年予算に返済金を盛り込まず、債務の再編を当て込んでいる。

グスマン経済相は、「我が国のマクロ経済の持続可能性を阻害している(金利の)上乗せ政策について、IMF出資国が変更を支持し、政府が打ち出しているマクロ経済プログラムを支援することを我々は望んでいる」と語った。

IMF側は、新たなプログラムについてアルゼンチンとの積極的かつ友好的な対話を続けるとしているが、今のところ金利上乗せの取り下げには応じていない。

IMFの規定では、借入国の出資割当額と比べて特に融資額が大きい場合、金利に2%が上乗せされる。IMFの資金がむやみに長く利用されるのを防ぐ仕組みで、そうした大きな借り入れが3年を超えると上乗せ金利は3%に上昇する。

アルゼンチンは金利上乗せの対象だが、協議の関係者らによると、IMFのいくつかの主要出資国が適用除外に反対している。アルゼンチンには、特

別扱いを懇願しながら方針から外れて債権者側を失望させてきた前歴があ

ると指摘されているという。また、アルゼンチンは財政赤字の削減や、政府による価格統制や為替管理にもかかわらず年率50%を超える物価上昇の抑制など、重要な分野で信頼できる見通しを示せていないことも批判されている。

グスマン氏が20年8月に民間債権者と650億ドルの債務の再編について合意をまとめた時点では、IMFとの合意も早々にまとまりそうだとの期待が高まった。だが、アルゼンチン政治で常に悪者扱いされてきたIMFに対して同国政府が敵対的な攻撃姿勢を強めるなかで、この楽観論は消え去ろう

としている。

22年3月までにIMFと合意に達する可能性はどの程度かとの問いに、グスマン氏はこう答えた。「何よりもアルゼンチンの提案に対する国際社会の

支持にかかっており、基本的にアルゼンチンが提案しているのは融資の借り換えができるようにすることだ」

アルゼンチン政府は特に、IMFが18年にマクリ前政権に対し、緊急時に融資を受けられる570億ドルの「スタンドバイ融資枠」を設定したことに批判の矛先を向けている。資本流出の穴埋めに使われたということと、政治的動機

に基づくものだったとの理由から、融資枠は設定されるべきでなかったとい

うのがアルゼンチン政府の言い分だ。

ブエノスアイレスのある銀行幹部は「新型コロナウイルス危機がピークに達して米国がさほど強硬な姿勢ではなかった21年初めに、グスマン氏はIMFと合意を交わす絶好の機会を逃した」と話した。「今、アルゼンチンは合意か

らますます遠ざかっている」と述べている。

投稿者荒尾保一