(時事通信)

はちみつ市場が玉不足で窮地に立たされている。はちみつは、昨年秋以降グリホサート問題で国内市場が混乱した。混乱の引き金となったポジティブリストの基準値は現在、従前の0.01ppmから海外で一般的な0.05ppmへ改められ運用されている。だが必要以上に取りざたされた余波は現在も残っており、場当たり的に棚を埋めた売場が末端で散見されている。

北半球ではまもなく各生産国で採蜜がスタートすることになるが、すでに採蜜を終え新蜜の取引が行われているアルゼンチンでは、200円/㎏以上価格が上昇する異常事態となっており、国内商社が仕入れで「買い負け」する事態が続発している。

その背景は、新型コロナウイルスの感染拡大による健康志向の高まりから、米国、欧州などで需要増加が続いていること。加えて、昨年はカナダ産が大雨で大減産となり、ハンガリーをはじめとする東欧産は3年連続で不作だったため。

これにより昨年が平年作で世界第2位のはちみつ生産国・アルゼンチンに買い付けが集中した。買い負けは「日本では末端売価が安すぎるため、高騰する相場に合わせられない」「厳格なガイドラインが影響し、現地業者が日本との取引を回避するようになった」(商社筋)ことによるもの。

国内のはちみつ市場は、2019年に巣ごもりによって約3%市場規模が拡大し、2021年も高止まりで推移した。昨年は下期でやや失速し微減だったものの、健康イメージが高く引き続き安定した需要を維持している。

国内のはちみつ市場は、広大な蜜源を持ち、安心安全で安価な中国産蜜の輸入が拡大した結果、市場が形成されてきた。イメージ先行の「チャイナフリー」はいまだに消費者心理に残っているが、中国産も天候異変や人件費の高騰、検査コストの増加、内需拡大などにより、原料相場は毎年上昇し高級化している。だが末端ではなかなか価格改定できないのが現状となっている。

アルゼンチン産の高騰、人気のカナダ産やハンガリー産も不作が続いており、2014年から徐々に輸入量を増やしてきたウクライナ産も「戦時状態に入ったため輸入の見通しは消えた」(同)模様だけに、これまでのはちみつの価値観を国際基準にアップデートし、価格改定を進めなければならない。

投稿者荒尾保一