【AFP=時事】アルゼンチンのある家族が今月、世界五大陸を車で回る旅を終え、首都ブエノスアイレスに戻ってきた。22年前に出発した時は夫婦2人だったが、旅の途中で生まれた子ども4人もすっかり大きくなった。 【写真】サップさん一家が世界を旅した1928年製グラハムページの車内 エルマン・サップ(Herman Zapp)さん(53)とカンデラリア・サップ(Candelaria Zapp)さん(51)夫婦は、2000年1月25日にブエノスアイレスのシンボル、オベリスク(Obelisk)を出発。36万2000キロを移動し、今月13日に再び同じ場所に帰ってきた。 ゴールする直前に夫のエルマンさんは、「複雑な気持ちです。夢が終わりに近づくと同時に、いよいよ夢がかなうかと思うと」とAFPに語った。 エルマンさんとカンデラリアさんは米アラスカ州のバックパック旅行からスタートしたが、途中で人から1928年製の米国車グラハムページ(Graham-Paige)を譲り受けた。当初はエンジンの調子も悪く、塗装も剥げていた。 今も絶えず点検が必要だが、「街の中でも、ぬかるみでも、砂の上でもよく走ってくれました」とエルマンさんは言う。 米国を旅していた時に長男パンパ(Pampa Zapp)さん(19)が生まれた。アルゼンチンに一時帰国した際にテフエ(Tehue Zapp)さん(16)が生まれ、車を改造。車体を半分に切断し、全長を約40センチ延ばしてシートを1列増やし、その後、カナダで生まれたパロマ(Paloma Zapp)さん(14)とオーストラリアで生まれたワラビー(Wallaby Zapp)さん(12)が乗るスペースが確保された。 新型コロナウイルスが流行し、ブラジルで足止めされた2020年には、犬と猫が1匹ずつ一家に仲間入りした。 旅先ではさまざまな人々が自宅に招き、泊めてくれたという。その数は約2000軒に上る。 「人ってすごい」とカンデラリアさんは言う。「(私たちの)夢のために多くの人が協力してくれました」と続けた。 しかし、楽なことばかりではなかった。エルマンさんはマラリアに感染した。アジアでは鳥インフルエンザ、アフリカではエボラウイルス病、さらに中米ではデング熱の流行に出くわした。 ■友達をたくさんつくりたい 家族の冒険をつづった本「Catching a Dream(夢をつかんで)」は約10万部売れた。旅費は主にこの本の売り上げで賄われたという。 子どもたちにとっては、掛け替えのない経験となった。旅の間はカンデラリアさんによるホームスクーリングと遠隔授業で勉強していたが、今後はアルゼンチンで対面式授業を受ける。 パロマさんは、「一番したいことは、友達をたくさんつくることです」と話した。
投稿者荒尾保一